母と暮らして10日間 老化と病気について考える
母と暮らして10日間
老化と病気について考える。
ちょっと長いです。
47年ぶりに母と同居を始めて10日が経過した、
47年前は父と弟と妹がいて母と5人で暮らしていたが、今回は場所も三重県から埼玉に変わり家も若干狭くなり、妻と母と3人で暮らしている。
何よりも40代だった母は90代になり、10代だった自分は60代になった。
2月に母が三重県の病院に緊急入院して2週間で退院し、10日経って埼玉に引っ越してきた。
実家はまだそのまま、だけど母とは同居が始まることになった。
三重で担当してもらった医師も、埼玉に来て担当してもらっている医師も同じような話ぶりで、同じような内容の事を言う。
データが同じなんだからそう言うことになるんだろう。
このところの母の様子。
朝、7時過ぎに部屋に入ると、布団からチラとこちらを見て微笑む。
もう着替えとるんやで。
ちょっと寒いからな。
どこかにつかまりながら、のそのそろ起き出して、テーブルの上の水を少し含むとトイレに行く。
長いなぁと思う頃に出てきて椅子に座る。
今日はなぁ2時と4時と6時に起きて、よう寝たわ。
ああ、幸せ。
と言いながら、ぼんやりする。
認知症の症状は全然ない。
普通に話が出来て、普通に記憶も正しい。
少し耳が遠い印象があるが、それも声を少し大きくすると伝わる。
引っ越しをして来てから、役所に行ったり病院に行ったりで、午前中は外出する事が何度かあった。
帰ってくると、ちょっと疲れたと言って横になる。
すぐグウグウ小さなイビキをしながら寝る。
30分前後横になっていたと思うと、目を開けて、よう寝た、という。
起きて椅子に座り、数独やナンプレなどの書き込むクイズをやっている。
ボケたら面白ないからな。
施設とか入るの嫌やし。
引っ越しの前もこちらに来てからも、来訪者が多い。
周りの人に愛されて来たのが本当によくわかる。
誰かが来るとひとしきり話をする。
少しずつ調子が乗って来て、10年ほど若くなったような話ぶりになる。
終わって帰ると、ちょっと疲れたと言ってまた横になる。
すぐまたグウグウ軽くいびきをかいたりしながら、20分30分寝ている。
目を覚まして、水を飲みトイレに行って低い椅子に座る。
人が来たり、どこかに出かけたりすると、1時間に対して1時間は横になって休む。
バランスをとっているのか、それが今の体の自然なのかと思う。
食事は3食きちんと食べる。
少し量は減っているが、ダイエットをしている20代よりはよっぽど食べている。
おかずを箸で小さく刻んで口に入れる。
パンはちょっと硬いなと言いながら、紅茶に浸して美味しそうに食べる。
ああ幸せ。
私、本当に幸せやわ。
お嫁さんと暮らすと大変やって聞いてたけど、全然優しくてよかった。
血圧を測り体重を測り、塩分に気をつけて調味料を減らしている。
三重の医師も埼玉の医師も同じような内容を話す。
心不全の症状は薬で良くなっているが、いつまた何が起きるかわからない。
心臓の器質的な問題は悪くなる事はあっても良くなる事はない。
三重の医師に入院1週間目に母と最初に説明を聞いた時は、5年生存率の話が最初で、この病気は悪化をしていって入退院を繰り返すという話が最初で、でも手術や様子を見ながらという人もいるというような話をされた。
埼玉の医師も似たような内容で、心臓の気質的な問題はかなり重篤で重症に分類される。
開胸手術は年齢的に危ないので、カテーテルの可能性はある。
手術しない場合は?と聞くと、ピンピンコロリで突然死、あるいは突然意識がなくなるとか突然苦しくなるとか、または入退院を繰り返すことになるというような話を、母の目の前で開口一番に話をしていた。
さすがに動揺した母が涙すると、少し話ぶりが変わって、手術しない場合はかかりつけ医を見つけていくのか、入院が可能な総合病院を探すのか、訪問医療を考えていくのか、いずれにしても自分が責任を持って一緒に考えますという話になって来た。
老化と病気について考えた。
母は病気なんだろうか。
確かに心臓の器質的問題は、問題としてはかなり重篤だろうと思う。
しかし、とも思う。
人は年を取ればシワになる。
シワが深い人が病気だとはあまり思わない。
骨が変形する人もいる、というか高齢になれば全員が骨は変形している。
では、骨の変形は病気なのか。
確かに膝に痛みがあって歩けなくなったりした場合、骨の変形が原因なら、それを病気として人工膝関節に置換する事はある。
心臓についてもそうなんだろう。
器質的な問題があれば、それを病気として置換する何かを入れる。
難しい問題のような気がする。
年齢を受け入れて、そのままにする判断はあるんだろうと思う。
今の母の生活ぶりを見ていると、今の自分の心臓で生きていけるような生活のように見える。
いやいや突然なにが起こるか分かりません、という医師の声も分かる。
でも今の生活が今の彼女の体に合っているような気もする。
生きるってどういうことなんでしょう。
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この文章はSNSに書いたものです。
医師が気に入らないとは全く言っていません。
きっと正しいと思います。
それは分かった上で、話ぶりに忸怩たる思いが湧きます。
それもまた仕方がないと思います。
母は病気なんでしょうか。
老化は病気なんだろうか。
でも、少しでも良くなるんだったら、文明を利用しない手はないとも思う。
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