整体師のための法律問題
整体師は民間の資格で国家資格にはなっていません。
国家資格になっていないため当該資格を規定する法律はありません。
整体師・民間手技療法に関する法律はありませんが、これまでに医療事故の判例として判断が下されたり、厚生労働省から通達が出されたりしているものがあります。
整体師になる皆さんには心配な部分もあるかと思いますので、開業をする際の根拠となっている判例などを記載します。
内容については健康政策六法(平成14年版)から抜粋しました。
てあて整体院をオープンした時期のものですが、判例はそのまま残るので参考にしてください。
法律文書で読みづらいとは思いますが、解説はしません。
ご自身で読み判断して頂けたらと思います。
ここに記載したのは以下のことについてです。
「医業類似行為は、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為でなければ禁止処罰の対象とはならない。(医療事故判例)」
「いわゆる無届医業類似行為に関する最高裁判所の判例について(医発247の1厚生省医務局長通知)」
「法令適用上の疑義について (疑義照会回答)」
「医業類似行為に対する取扱について(医事58 厚生省健康政策局医事課長通知)」
「柔道整復師の業務範囲及び医業類似行為について」
「広告取締に関する件」
尚、最近(平成29年)になって消費者庁から以下のような文章を発表しました。
「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」(平成29年5月26日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_release_170526_0002.pdf
こちらも参考にしてください。
■ 医業類似行為は、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為でなければ禁止処罰の対象とはならない。
~ 昭和35年1月27日 最高裁大法廷判決 (医療事故判例(資料))
論旨は、被告人の業としたHS式無熱高周波療法が、あん摩、はり師、きゅう師及び柔道整復師法にいう医業類似行為として同法の適用を受け禁止されるものであるならば、同法は憲法二十二条に違反する無効な法律であるから、かかる法律により被告人を処罰することはできない。本件HS式無熱高周波療法は有効無害の療法であって公共の福祉に反しないので、これを禁止する右法は違憲であり、被告人の所為は罪とはならないものであるというに帰する。
憲法二十二条は、何人も公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有することを保障している。さればあん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法第十二条が何人も同法一条に掲げるものを除くほか、医業類似行為を業としてはならないと規定し、同条に違反した者を同十四条が処罰するのは、これらの医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するものと認めたが故にほかならない。ところで、医療類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞れがあるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞れのある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであって、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記十二条、十四条は憲法二十二条に反するものではない。しかるに原審弁護人の本件HS式無熱高周波療法はいささかも人体に危害を与えず、また保健衛生上なんら悪影響がないのであるから、これが施行を業のは少しも公共の福祉に反せずしたがって憲法二十二条によって保障された職業選択の自由に属するとの控訴趣意に対し、原判決は被告人の業とした本件HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞れがあるか否かの点についてはなんら判示するところがなく、ただ被告人が本件HS式無熱高周波療法を業として行った事実だけで前記法律十二条に違反したものと即断したことは、右法律の解釈を誤った違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、現判決を廃棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。
よって、刑訴四百十三条前段に従い、主文の通り判決する。
この判決は裁判官田中耕太郎、同下飯潤夫、同石坂修一の後記反対意見があるほか、裁判官全員の一致した意見によるものである。
裁判官田中耕太郎、同下飯潤夫の反対意見は次の通りである。
われわれは、医業類似行為を業とすることの法律による処罰が、「人の健康に害を及ぼす虞れのある業務行為に限局する趣旨」のものとする多数意見の解釈に賛成することができない。人の健康に害を及ぼす虞れがあるかないかは療治をうける対象たる「人」の如何によってちがってくる。またそれは療治の実施の「方法」の如何にもかかっている。従って有害無害は一概に判断できない場合がはなはだ多い。この故に法律は医療類似行為が一般的に人の健康に害を及ぼす虞があるものという想定の下にこの種の行為を画一的に禁止したものである。個々の場合に無害な行為といえども取締の対象になることがあるのは、公共の福祉の要請からして、やむを得ない。かような画一性は法の特色とするところである。
要するに本件のような場合に有害の虞の有無の認定は不必要である。いわんや法律の趣旨は原判決や石坂裁判官の反対意見にのべられているような、外の理由もふくんでいるにおいておや。つまり無害の行為についても他の弊害が在るにおいておや。
以上の理由からしてわれわれは本件上告を理由がないものとし、棄却すべきものと考える。
裁判官石坂修一の反対意見は次の通りである。
私は、多数意見の結論に賛同できない。
原審の判事する所は、必ずしも分明であるとはいえないけれども、原審挙示の証拠とその判文とを相俟つときは、原審は、被告人が、HS式高周波器という器具を用い、料金を徴して、HS式無熱高周波療法と称する治療法を施したこと、即ち右施術を業として行ったこと、HS式無熱高周波法は、電気理論を応用して、単なる健康維持増進のためのみならず、疾病治療のためにも行われ、少なくとも右HS式無熱高周波療法が、これに使用せられる器具の製作者、施術者並びに被施術者の間では、殆ど全ての疾病に顕著な治療効果があると信ぜられていること及び右治療法が、HS式高周波器により二枚の導子を以って患部を挟み電流を人体に透射するものであることを認定しているものと理解し得られる。
かかる治療方法は、健康状態良好なる人にとりては格別違和ある人、或いは疾病患者に、違和状態、疾病の種類、その程度の如何によっては、悪影響のないことを到底保し難い。それのみならず、疾病、その程度、治療、恢復期等につきともかく安易なる希望を持ち易い患者の心理傾向上殊に何らかの影響があるが如く感ぜられる場合、本件のごとき治療法に依頼すること甚だしきに過ぎ、正常なる医療を受ける機会、ひいては医療の適期を失い、恢復期を遅遅する等の危険少なしとせざるべく、人の健康、公共衛生に害を及ぼす虞も亦あるものといわねばならない。(記録に徴しても、HS式高周波器より高周波電流を人体に透射した場合、人体の透射局所内に微量の過熱の発生を見るのであって健常人に対し透射時間の短いとき以外、生理的に悪影響とはいえない。)
されば、HS式無熱高周波療法を健康の維持増進に止まらないで、疾病治療のためにしようとするがごときことは、何事にも利弊相伴う実情よりして、人体及びその疾病、これに対する診断並びに治療についての知識と、これをしようする技術が充分でなければ、人の保健、公共衛生上必ずしも良好なる結果を招くものとはいえない。したがって、前記高周波器を使用する右無熱高周波療法を業とする行為は、所論の如く、公共の福祉に貢献こそすれ、決してこれに反しないものであるとなし得ない。
而してあん摩師、はり師、きゅう師、及び柔道整復師法がかかる医業類似行為を資格なくして業として行うことを禁止している所以は、これを自由に放置することは、前述の如く、人の健康、公衆衛生に有効無害であるとの保障もなく、正常なる医療を受ける機会を失わしめる虞があって正常なる医療行為の普及徹底並びに公共衛生の改善工場のため望ましくないので、わが国の保健衛生状態の改善向上をはかるとともに、国民各々に正常なる医療を享受する機会を広く与える目的に出たものと解するのが相当である。
したがって原判示のごとき器具を使用して、原判示の如き医業類似行為を業とすることを禁止する本法は、公共の福祉のため、必要とするのであって、職業選択の自由を不当に制限したとはいえないのであるから、これを憲法違反であると断じ得ない。単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない。
原判示は以上と同趣旨に出ているのであるこれらを維持すべきものであると考える。
■ いわゆる無届医業類似行為に関する最高裁判所の判決について
~ 昭和35年3月30日 医発247の1 各都道府県知事宛 厚生省医務局長通知
本年1月27日に別紙(略)のとおり、いわゆる無届医業類似行為に関する最高裁判所の判決があり、これに関し都道府県において医業類似行為業の取り扱いに疑義が生じているやに聞き及んでいるが、この判決に対する当局の見解は、左記のとおりであるから通知する。
記
1 この判決は、医業類似行為業、すなわち、手技、温熱、電気、光線、刺激等の療術行為について判示したものであって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないものであるから、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復を無免許で業として行えば、その事実をもってあん摩師法等第一条及び第十四条第一号の規定により処罰の対象となるものであると解されること。
従って、無免許あん摩師などの取締りの方針は、従来どおりであること。
なお、無届の医業類似行為者の行う施術には医師法違反にわたるおそれのあるものもあるので注意すること。
2 判決は、前項の医業類似行為について、禁止処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局されると判示し、実際に禁止処罰を行うには、単に業として人に施術を行ったという事実を認定するだけでなく、その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要であるとしていること。
なお、当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。
3 判決は、第一項の医業類似行為業に関し、あん摩師法第十九条第一項に規定する届出医業類似行為業者については判示していないものであるから、これらの業者の当該業務に関する取り扱いは従来どおりであること。
■法令適用上の疑義について (疑義照会回答)
~ 昭和45年7月9日 医発796
【照会】
次の療法について、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律の適用上疑義が生じたので折り返しご教示願います。
記
1 カイロプラクチック療法
この療法は1895年米国のダニエル・ダヴィッドパーマーによって創案され、手技により脊柱の不全、脱臼を矯正する方法で脊椎矯正療法ともいわれているが、これを指圧に含めてよいかどうか。
2 三稜鍼療法
三稜鍼又は刺絡器を使用し、皮膚の一部に吸角器をあて瀉血する療法は医業類似行為か医行為のいずれか。
【回答】
1について
御照会のカイロプラクチック療法は、脊椎の調整を目的とする点において、あん摩、マッサージ又は指圧と区別され、したがって、あん摩、マッサージ又は指圧に含まれないものと解する。
2について
三稜鍼を用いて瀉血を行うことは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為であって、医行為に相当し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に規定するはり業には含まれないものと解する。
なお、三稜鍼の使用に関する別添(写)の大正十一年三月十七日の大審院判決〔抄〕を参照されたい。
別添 略
■ 医業類似行為に対する取扱について
~ 平成3年6月28日 医事58 各都道府県衛生担当部(局)長宛 厚生省健康政策局医事課長通知
近時、多様な形態の医業類似行為又はこれと紛らわしい行為が見られるが、これらの行為に対する取り扱いについては左記のとおりとするので、御了知いただくとともに、関係方面に対する周知・指導方よろしくお願いする。
記
1 医業類似行為に対する取扱いについて
(1)あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復について
医業類似行為のうち、あん摩、マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和45年 法律第19号)第15号により、それぞれあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師の免許を有する者でなければこれを行ってはならないものであるので、無免許で業としてこれらの行為を行ったものは、それぞれあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第13条の5及び柔道整復師方第26条により処罰の対象になるものであること。
(2)あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第12条の2により同法公布の際引き続き3ヶ月以上医業類似行為を業としていた者で、届出をした者でなければこれを行ってはならないものであること。したがって、これらの届出をしていない者については、昭和35年3月30日付け医発第247号の1厚生省医務局長通知で示したとおり、当該医業類似行為の施術が医学的観点から人体に害を及ぼすおそればあれば禁止処罰の対象となるものであること。
2.いわゆるカイロプラクティック療法に対する取り扱いについて
近時、カイロプラクティックと称して多様な療法を行う者が増加してきているが、カイロプラクティック療法については従来よりその有効性や危険性が明らかでなかったため、当省に「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」のための研究会を設けて検討を行ってきたところである。今般、同研究会より別添のとおり報告書がとりまとめられたが、同報告においては、カイロプラクティック療法の医学的効果についての科学的評価は未だ定まっておらず、今後とも検討が必要であるとの認識を示す一方で、同療法による事故を未然に防止するために必要な事項を指摘している。
こうした報告内容を踏まえ、今後のカイロプラクティック療法に対する取り扱いについては、以下のとおりとする。
(1)禁忌対象疾患の認識
カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でない疾患としては、一般には腫瘍性、出血性、感染症疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされているが、このほか徒手調整の手技によって症状を悪化しうる頻度の高い疾患、例えば、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊柱症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、カイロプラクティック療法の対象とすることは適当ではないこと。
(2)一部の危険な手技の禁止
カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。
(3)適切な医療受療の遅延防止
長期間あるいは頻回のカイロプラクティック療法による施術によっても症状が憎悪する場合はもとより、腰痛等の症状が軽減、消失しない場合には、潜在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けること。
(4)誇大広告の規制
カイロプラクティック療法に関して行われている誇大広告、とりわけがんの治療等医学的有効性をうたった広告については、あん摩、マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第12条の2第2項において準用する第7条第1項又は医療法(昭和23年法律第205号)第69条第1項に基づく規制の対象となるものであること。
別添 略
■ 柔道整復師の業務範囲及び医業類似行為について
~ 昭和32年9月18日 医発799
【照会】
1 柔道整復師の業務範囲について
(1)あん摩、はり師、きゅう師及び柔道整復師法(以下「法」という。)第一条に規定する行為の個々の具体的内容については法的に明確な規定がないが、法第五条に規定するあん摩師及び柔道整復師の施術は、法第一条との関係の下に夫々あん摩師及び柔道整復師の個々の業務範囲におけるものと思料されますが、柔道整復師が柔道制服行為を行うに際し、社会通念上、当然に柔道整復行為に附随すると見なされる程度のあん摩(指圧及びマッサージを含む)行為をなすことは差し支えないと解してよろしいか。
(2)柔道整復師が医師又は患者の要請等により、柔道整復の治療を完了して単にあん摩(指圧及びマッサージを含む)のみの治療を必要とする患者に対し、その行為のみを行うことは法第一条の規定に違反すると解してよろしいか。
【回答】
1 (1)・(2) 貴意見の通り。
■ 広告取締に関する件
~ 昭和24年5月16日 医収589
【照会】
施術所の名称についても接骨院、はり院、きゅう療院、きゅう治療所等、療、院の文字を使用する者があるが之についても併せてご解答願いたい。
【回答】
施術所の名称に関しては、はり院、きゅう療院等はり、きゅう等の施術所であることを明示する名称を使用することは差し支えないが、単に「○○療院」「○○治療所」という如き病院又は診療所に紛らわしい名称を附けることは許されない。