胸を張ると姿勢が悪くなる話
姿勢を良くしようと胸を張ると姿勢が悪くなります。
これ、姿勢を何で捉えるかという基準の違いがそうさせます。
荒木は整体師です。
整体師には整体師の良い姿勢の基準があります。
呼吸が自然に出来ている。
血流がどこも阻害されていない。
これが良い姿勢の基準です。
この基準で良い姿勢になると、自然な美しさがあります。
ランウェイを歩くモデルさんとは違う美しさです。
モデルさんにはモデルさんの美しさがあります。
ショーアップされた中で人に見られる美しさです。
それと普段の良い姿勢=美しい姿勢は別物だと考えています。
胸を張ると、肋骨の動きが制限されます。
筋肉を使って肋骨を持ち上げ、持ち上げた状態で動かないようにしようとします。
その事が呼吸を浅くさせてしまいます。
自然な呼吸は自然な肋骨の動きが前提です。
呼吸のための筋肉は使われますが、それ以外の筋肉は使われない状態です。
自然な呼吸で立っていると、上半身は常に少し動いています。
動いているというより止まっておらず固まっていません。
微妙な動きで揺らぎのような感覚のものだと思います。
骨がないような、肉の塊が膨らんだりしぼんだりを繰り返す微妙な動きです。
それは生きている間ずっと続く自律運動です。
血流もこれと同じ。
どこかが阻害されている姿勢は、不自然な力が入っている姿勢です。
だから呼吸と血流。
自分の姿勢を見直してみましょう。
立って居る・座って居る、という動作
立っている姿勢
座っている姿勢
そのままで居る時、動いているとはあまり感じません。
でも、姿勢は動きの中にあります。
立って居る、座って居る、という動作です。
動作なので変えることが出来ます。
姿勢は形として固まって居る訳ではなく、自分の使い方の結果です。
自分の使い方、自分の動きを変えれば、立って居る姿勢も座って居る姿勢も変わります。
猫背も反り腰も巻肩もです。
生まれながらにそうなっている訳ではありません。
まず、自分の動きに気が付くことです。
どこに力が入って居るか。
どこの力が抜けて居るか。
どこが止まっていて、どこが動いているか。
そういった自分の状態を感じる事が大切です。
自分を感じないままに、姿勢を変えると、ただ形を変えただけで、固まってしまいます。
固まった使い方は、良い姿勢に見えても、どんどん苦しくなります。
良い姿勢は楽な姿勢です。
普段も楽だと思っているかもしれませんが、それは普段自分の体を感じていないだけかもしれません。
猫背や巻肩を楽だと感じるのは、普段あまり自分を感じない事や、”いつもの”感じだけを感じているからかもしれません。
息は出来ているか、固まっていないか、どこかに力が入りすぎていないか。
それを感じるようにして下さい。
まずはそこからです。
正しい姿勢
てあて整体スクールには姿勢の授業があります。
姿勢の授業の最初に確認するのは、正しい姿勢とそうでない姿勢です。
いえ、実は違います。
何が生理的な姿勢なのかという事です。
たぶん話がややこしいので、興味のある人だけ読んで下さい。
正しい姿勢や良い姿勢、悪い姿勢とはどんな姿勢ですか。
正しい姿勢って聞くと何を思い出しますか。
そもそも正しいってどう言うことですか。
正しい姿勢と聞くと、子どもの頃に言われた、胸を張って少し顎を引いた姿勢を思い出す人がいます。
また、耳垂(みみたぶ)と肩峰と大転子と踝(くるぶし)が一直線にならんだ姿勢を思い出す人もいます。
壁に背中をつけて、お尻と踵と頭の後ろが壁についた姿勢を考える人もいるかもしれません。
どの姿勢もキリッとして凛々しく力強くはっきりきっぱりしているように見えます。
確かに綺麗な姿勢に見えます。
でも苦しそう。
とも言えます。
苦しくない人もいるかもしれませんが、その姿勢を長くしていると苦しくなる人は多いと思います。
では、正しい姿勢は苦しいのか。
正しいのに苦しいってどう言うことでしょう。
正しいのに長時間続けられないってどう言うことでしょう。
たぶん定義の仕方が違っているんだろうと思います。
正しい正しくないは時によって変わります。
美しさだって時代で変わります。
今の10代20代の人の可愛いと、50代60代の可愛いは違うでしょう。
江戸時代の人の可愛いも違うと思いますし、アメリカ人の可愛いも違うしフランス人の可愛いも中国人の可愛いもたぶん違う。
だから正しい正しくないで評価してはいけないのかもしれないと思います。
でもまあ、一般には正しい正しくない、良い悪いで評価します。
日本だけかどうかは知りませんが、正しいにはこんな印象がないですか?
キチンとした。
整然とした。
しっかりした。
くだけていない。
ふにゃふにゃしていない・
硬い。
そんな印象があるように思います。
その印象に引きずられてしまう感じがあります。
姿勢は形ではありません。
姿勢は状態です。
その人が自分の体の筋肉を使って、立つと言う運動をしている時の、写真で撮った瞬間です。
だから固まってはいません。
形よりも状態のことを考えるべきだろうと思います。
では、正しいでなければ何なのか。
生理的な状態
と考えます。
最初にも書きましたけど、生理的な状態なのかどうかがポイントです。
では生理的とはどんな意味か。
「理屈ではなく本能的な」といろいろなところに書かれています。
「生まれながらに持っているあるべき状態」と考えています。
でも、そんな漠然としたものでは分かりにくいので、荒木はこう捉えています。
呼吸が楽。
血流が楽。
この二つです。
呼吸が楽で血流が楽。
これは、呼吸も血流も何かに阻害されていない、という意味です。
積極的に良いというより、阻害されていない。
呼吸が楽かどうかは、その姿勢と普段の姿勢の時の呼吸を比べれば良い。
血流は手足の体温を感じてみたり、むくみを感じてみたりすれば良いと思います。
血流が良くなれば、手足の体温は上がりやすいし、むくみは取れやすくなります。
うまくいっているかどうか確認するのに時間が掛かりますけどね。
正しい姿勢は、呼吸が楽で、血流が楽な姿勢です。
呼吸と血流が阻害されていない姿勢が、生理的な姿勢で整体師として目指すべき姿勢と考えています。
そして姿勢は形ではなく状態です。
普段の姿勢は苦しい訳ではないですよね。
そうなんです。
そこもポイントなんです。
普段の姿勢はいつもやっている姿勢なので、苦しくありません。
正確には苦しく感じている訳ではありません。
だから、姿勢を変えた時には、普段と比べる必要があります。
大変になったのか、楽になったのか。
いつもより反っているとか、いつもより猫背だとか、という形の話ではなく、楽になったのかどうかを比べます。
普段がデフォルト(初期値)として認識されていますから。
普段は楽で正しい姿勢と感じています。
だから普段猫背の人は楽になると、反ったようになることが殆どです。
普段より反ったから間違っていると判断しないで下さい。
普段よりも反ってるけど、楽かどうか。
そこがポイントです。
もちろん生理的な状態というだが全てではないですよ。
ランウェイを歩くモデルさんにはモデルさんとしての正しい姿勢がある。
お相撲さんにはお相撲さんの正しい姿勢がある。
写真を撮られる時には、その時だけの正しい姿勢がある。
でも、普段は・・・という話です。