トウシューズは何歳から?
トウシューズは何歳から履くのが良いのか。
バレエを始めた子供にトウシューズを履かせる年齢については、さまざまな意見や考え方があることと思います。
国際ダンス医科学学会が2009年に出したガイドライン(指針)があり、要約するとこんな感じです。
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生徒の筋骨格などの体の状況や練習状況などを注意深く評価し、必要条件を満たしていること。
その上で8歳かそれ以降にバレエを始めて少なくとも週2回以上のレッスンを受けていること。
バレエを始めて4年目にトウシューズの練習を始めるべき。
(ガイドラインには『決して12歳以下ではないこと。』ともあります。)
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さらにこんなことも書いてあります。
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体幹の安定性が弱く、足と足首が柔軟すぎる生徒は、安全にトウシューズの練習を始めるために更なる筋力トレーニングが必要でしょう。
バレエのレッスンを週に1 回だけ受けている、あるいはプロを目指して練習していない生徒には、トウシューズの練習を思いとどまらせるべきです。
また足関節底屈動作の可動域が小さく、脚のアライメント問題を抱えている生徒には、トウシューズを履くことを許すべきではありません。
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※国際ダンス医科学学会 >>> トウシューズを履き始める時期はいつでしょう?
トウシューズは12歳からと読めます。
バレエを習っているお子さんの相談を聞いたり診たりしていると、日本では9歳や10歳、早いところでは8歳でトウシューズを履かせる教室があるようです。
トウシューズを履く前に筋力テストやテクニックのテストがある所もあると聞きました。
個人差があるから一概に言えないと言う意見も聞きます。
バレエを始めた子供が、早くトウシューズを履きたいと思う気持ちはとても分かります。
親御さんが自分の子供にトウシューズを履かせたい気持ちも分かる。
教える側のバレエの先生にとって、早めにトウシューズを履く生徒がいるバレエスタジオのほうが、生徒が集まりやすいと言うのも分からないでもありません。
でもどうでしょう。
日本の現状は少し行き過ぎのような気がします。
どうして12歳なのかガイドラインにも書いてありましたが、文献を調べながら理由を考えたいと思いました。
バレエを習っているお子さんのいる親御さんと、子供にバレエを教えている先生に参考にしてもらえたら嬉しいなと思います。
子供がトウシューズを履いても良いかどうかを決めるのは、やはり大人の仕事だと思います。
さらに最近になってダンスマガジンと言う雑誌に掲載された記事があります。
YAGP2017日本予選 特別レクチャーの記事で、題名は「11歳までトウシューズは履かなくて良い」です。
日本人の生徒は怪我をする確率が他国の生徒と比べると、とても高いことからなされました。
若手ダンサーを支援するコンクールの審査員からの提言は重く受け止めるべきだと思います。
※YAGP特別レクチャー >>> ”11歳までトウシューズは履かなくて良い”
骨格の問題
ガイドラインにも骨の問題は様々記載されていましたが、解剖学の専門書などから別の切り口で見たいと思います。これはすぐに気が付くことですが、12歳は成長期の入口です。
それまでは骨がちゃんと出来ていないんじゃないかということがあります。
調べてみました。
「プロメテウス解剖学アトラス」(医学書院刊)という解剖学の専門書があります。
そこに「1.8 体肢の骨化」という項目があります。
そこで骨結合の時期が書かれていました。
トウシューズに関係のありそうな骨の骨結合の時期を書いておきます。
主な骨結合の時期
・骨盤(腸骨、坐骨、恥骨) 20歳
・大腿骨(骨幹、骨頭、大転子、小転子) 18歳
・脛骨 近位骨端 13歳・ 骨幹 19歳
・足根骨 16歳
・中足骨 15歳
・趾骨(指節骨) 15歳
骨盤は20歳にならないと完全に骨化しないと言うことです。
それまでは腸骨、坐骨、恥骨という3つの骨に分かれていて、骨と骨の間は軟骨結合のようになっています。
生まれたばかりの赤ん坊のレントゲンを撮ると、骨格はあまり映らず骨がまだ未成熟なことが分かります。
骨結合の時期とは、骨の成長が終わる時期と考えられます。
骨結合が終わっていない段階では、大腿骨(太ももの骨)や脛骨(スネの骨)など長い骨は骨の端に活発な細胞分裂をしているところがあり、完成していないということを表しています。
足根骨・中足骨・趾骨は足の骨のことで、小さな骨がまだ固まっていないと言うことです。
骨の成長という点でだけ考えれば、12歳でもトウシューズを履くのは少し早いのかもしれないと思ってしまいます。
成長期との兼ね合い
12歳と言えば成長期の始まりです。それまでは子供の体ですが、成長期が始まると大人の体に変化して行きます。
では12歳までなら何歳でも同じなのではないか?という疑問が残ります。
「ヒトの成長と発達」(メディカル・サイエンス・インターナショナル発行)という人の成長に関する専門書があります。
そこに「2.身長と体重の成長」という項目があります。
そのなかに発育速度の変化について書かれた部分があります。
成長スパート
「小児が思春期にさしかかると、かなり安定していた身長の増加率が突如として著しく上昇する。これを思春期スパート(adolescent spurt)と呼ぶ。」(35P)「思春期の成長スパートは通常、女児では10.5~11歳、男児では12.5~13歳ころに始まるが、大きな変動がありうる。」(36P)
「ヒトは、思春期スパートの前にこのような長い静止期間がある唯一の哺乳動物であり、この主な理由は、他の動物よりも複雑なヒトの脳が成熟のために時間を要するので、思春期を先に延ばす必要があるためと考えられている。」(39P)
ここから読み取れるのは、脳が成熟する時期になって思春期スパート(成長スパート)が始まるということで、それまでは脳がまだ未成熟な状態だと言うことです。
脳が未成熟な状態では、神経と筋肉の繋がりも出来上がっておらず、思春期スパート以前には複雑な運動は難しいという可能性も考えられます。
このことから12歳くらいまでは基礎的なトレーニングで、バレエの左右対称な動きを体に覚えさせる方が良いのではと思います。
また、思春期スパート(成長スパート)前では筋力的には未成熟な状態と考えられ、自分の全体重を爪先だけで支えることは困難を極めると考えられます。
トウシューズを履く練習と共にバリエーションの練習の問題もあります。
バリエーションはバレエ作品の中のソロパートで、物語の中の踊りなのでストーリーに沿った振り付けになっています。
バレエを習い始めた子供が体のトレーニングのために踊るものと違い、左右対称でもなく順序立てて筋力をつけたり動きを体に覚えさせたりという構成になっていないのが普通です。
バリエーションを楽しみのために踊るのは良いことだと思いますが、これからという時期の子供に繰り返し躍らせるのは体の発達の観点からも考えなければいけないところだと思います。
※同署の119P・5.3性的年齢と思春期にこうあります。
「法的には、思春期とは機能的に個人が子どもをつくることが出来るようになる時期をいう。英国ではこの時期を、女児は12歳、男児は14歳に達していることと裁判所が認めている。
医学的には、”思春期”という用語は数年にわたって生じる一連の事象に対して用いられ、人によってその時期や順序は異なっている。」
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荒木は現代舞踊協会会員でもあります。
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